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【BIM2022 竹中工務店×応用技術】「オープンBIM」がデジタル化の根幹 - 日刊建設通信新聞

 業務の全データをデジタル化し、クラウドで社内外と共有する「建設デジタルプラットフォーム」の運用を始めた竹中工務店。動き出したDXへの取り組みは、指向する「オープンBIM」とどうつながっているか。竹中工務店の山崎裕昭BIM推進室グループ長、足立友和BIM推進室課長、大東宗幸デジタル室プロジェクトプロセスデジタル化グループ主任と、同社のBIMをコンサルティングしている応用技術の高木英一執行役員DX推進本部長、木村征爾DX推進本部 to BIMセールスチームマネージャの5人に語ってもらった。

--竹中工務店のBIM現在地と、応用技術との関係性は

竹中工務店 山崎 裕昭氏


  
 山崎 建設デジタルプラットフォームは社内だけでなく、社会ともつながる枠組みを目指している。その中でBIMはデータの根幹を成す。2010年のBIM導入から着実に実績を積み、18年からは各生産プロセスでBIMデータをどう運用していくか、という段階に入り、社内環境を整えてきた。現在は一定規模以上のプロジェクトに原則導入している。
 
  
   

竹中工務店 足立友和氏

足立 テンプレートやモデル作成ガイドに加え、BIMソフトの社内マニュアルも整備し、生産部門では3年前から講習会にも力を入れている。BIMソフトを使いこなす人たちの数とともに、スキルも向上し、一定レベルのモデルを作れる状況になってきた。特にBIMモデルから施工図を作成する際、モデルと2次元の齟齬(そご)をなくすことを重点課題として不具合を改善しており、着実に成果を出せている。
 
  
   

竹中工務店 大東宗幸氏

 大東 応用技術とは18年から関係が始まった。当初はBIMではなく、生産系のウェブ業務システム構築を依頼したのが始まり。その後、当社として仮設計画のツール開発に取り組もうと動き出した際、力を貸してもらい、それをきかっけにBIM関連でも連携するようになった。BIMデータの効率的な取り出し方とかモデル作成の効率的な仕組みづくりなど幅広い視点から助言をもらっている。BIMはデータをどう活用するかも重要であり、そこを意識して応用技術からもノウハウを提供してもらっている。

 高木 まさに竹中工務店はBIMデータの活用や運用について強く意識している。BIMを建物データベースとして捉え、蓄積したデータをどう使うべきか、そこを重要視している。われわれとの打ち合わせでも、一歩先をいく議論となり、こちらが勉強させてもらうケースも多い。

運用を始めた建設デジタルプラット フォームの枠組み

 木村 実は竹中工務店との接点が生まれた18年は、当社としてBIMコンサルティングを本格的に取り組み始めた時期と重なる。翌19年にはRevit支援パッケージ『BooT・one』をリリースし、ほぼ同じタイミングで竹中工務店から仮設計画のツール開発を相談され、BIMを軸にした関係が始まった。

応用技術 高木英一氏

 高木 BooT・oneユーザーは当時から、BIMで仮設計画をやりたいという相談が多く出ており、ちょうど仮設計画の部分を研究し始めたところだった。現在リリースしているBooT・oneの仮設ツールは竹中工務店のノウハウを取り入れて開発している。
 木村 そのほかにノンBIMユーザー向けクラウドサービス『スートルep』では仮設数量や部材体積拾い出し機能を竹中工務店向けにカスタマイズしてリリースしており、それを他社向けにも提供していく計画もある。さらにBIM360と連携してさまざまな数量の拾い出しをサポートする『ConnecT・one QS』も提供を始める予定だ。

ノンBIMユーザー向けクラウドサービス    「スートルep」


 大東 当社自身も仮設計画の部分についてはある程度の枠組みが整い、応用技術と連携して開発したツールの社内展開も始まった。社内講習会もスタートし、これから現場での仮設モデル活用が本格的に動き出すことになる。
 

応用技術 木村征爾氏


--竹中工務店のBIMの考え方は
 山崎 現在はどのプロジェクトもBIMを前提に動いており、BIM関連の業務ツールも浸透している。DXを見据えて社として建設デジタルプラットフォームの運用がスタートしているが、BIMがなければDXには行けない。DXの目標付けが出たことでBIMの向かうべき方向性も明確になった。デジタル戦略としてDXとBIMは両輪として動いている。

 足立 BIMに取り組んで既に10年以上になるが、浸透度としてはまだ完全とは言えない。社としてほとんどのプロジェクトでBIMデータを作成しているが、精度の部分もまだ満足はしていない。外部といかにデータをつないでいくかという視点も重要視しており、BIMの進展に合わせて新たな連携のテーマも出ている。

 山崎 そもそも当社はBIMソフトを限定しない「オープンBIM」を指向している。永続的にデータ連携の環境を確保したい思いがあり、中間ファイル形式「IFCデータによるBIM連携を選択した。協力会社やメーカーなどプロジェクト関係者が使うソフトウエアが異なっても、IFCベースであれば、彼らとのデータ連携も図りやすい。外部とつながるBIMを前提としているため、オープンBIMの手法をとっている。

 大東 当社は生産プロセスの各段階でBIMデータの活用を意識してツールを整えており、IFCデータを軸に生産プロセスも構築している。応用技術はそうした当社の考え方に賛同し、IFCベースでデータ連携が可能なツール開発に力を貸してもらっている。

 高木 いわば竹中工務店のBIMはツールありきではなく、データ活用を前提にしている。当社はオートデスクのBIMソリューションを得意としているが、IFCはどのソフトを使おうがベースとなるデータ形式であり、当社としても専門チームを設けて、しっかりと対応できるよう体制も拡充したい。

 山崎 IFCにこだわってきたことが結果として、建設デジタルプラットフォームの流れにうまくつながっている。デジタルツインを見据えた時、IFCをベースに業務ツールを構築すれば、社内外にきちんとつながるデータ環境を構築できる。

 大東 多岐にわたるプロジェクトの関係者とつながる環境構築が、BIMを最大限に活用する点で重要な視点と考えている。これはオープンBIMの考え方に通じている。

 足立 特に施工段階では複数の協力会社との連携になり、一つのソフトだけで対応できない。オープンBIMでなければ、連携先に負担をかけてしまうケースが出てくる。協力会社にとっては自らの愛用するソフトでゼネコン各社と連携できれば、データ構築の生産効率も良く、工場生産などにも積極的に活用できるメリットもある。

◆IFCデータを軸に生産プロセス構築

 
--今後の方向性は
 足立 オープンBIMを志向する当社の場合、個別ソリューションの視点ではなく、4Dや5Dの領域でIFCをベースとしたツールを整備していきたいと考えている。応用技術にはもっとIFCを突き詰め、主要BIMソフトから、どんなIFCデータが出力されているかを徹底して研究し、課題解決を推し進めてもらいたい。
 
山崎 DXを見据えた建設デジタルプラットフォームの取り組みとBIMはセットと考えている。今はまだ自分たちの業務を改善しているところだが、次のステップとして協力会社や顧客の業務についても価値を提供したい。

 足立 心がけるべきは、プロジェクト関係者間で相手のBIMモデル構築のプロセスを変えないように配慮すること。これはオープンBIMの考え方に通じている。モデルを作れば、そのままデータベースに流れる枠組みにしていきたい。

 大東 まさにBIMデータは建設デジタルプラットフォームの軸となるデータベースの核になる。社内だけでなく、社外にもつながるデジタル化の実現を目指していくだけに、そのベースとなるBIMをしっかりと構築することはわれわれの使命でもある。

 高木 竹中工務店がBIMを出発点にDXにかじを切ったように、当社もtoBIM推進部をDX推進本部に移行した。BIMは生産性を上げるのがゴールでなく、DXにどう寄与していくか。当社もBIMのその先を見据えていく。


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