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7月に支給開始か、家賃6カ月分支給の「家賃支援給付金」 |楽待不動産投資新聞 - 楽待

PHOTO:kash* / PIXTA

経済産業省は5月27日、家賃負担に苦しむ事業者に対し、最大600万円を給付する新たな制度として「家賃支援給付金」を発表した。制度の運用開始時期は未定で、令和2年度第2次補正予算の成立が前提となる本制度だが、成立すればテナント物件の家賃支払いに悩むオーナーにとって救いの一手となる可能性がある。今回は、新たな制度「家賃支援給付金」について解説。後半では、これまで発表された法人・個人が使える支援策も振り返っていく。

新設予定の「家賃支援給付金」とは

家賃支援給付金の目的は、新型コロナウイルスの影響で売り上げが急減した事業者を支えるため、固定費の中で大きな割合を占める「地代・家賃」の負担を軽減することである。たとえ売り上げが減っても、休業をしても、家賃の額は原則減ることはない。休業中の雇用を維持するため、人件費には「雇用調整助成金」で一定額が給付されるが、家賃を支援する給付金はこれまでなかった。コロナ禍で売上減少に苦しむ事業者にとっては待望の支援策となりそうだが、給付には以下の条件がある。

<給付条件>
中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者等であって、5~12月において以下のいずれかに該当する

(1)いずれか1カ月の売上高が前年同月比で50%以上減少
(2)連続する3カ月の売上高が前年同期比で30%以上減少

<給付額>
算出給付額の6カ月分

<算出給付額>
法人:直近の支払家賃75万円まで給付率3分の2、超過部分は例外措置として3分の1
個人事業者:直近の支払家賃37万5000円まで給付率3分の2、超過部分は例外措置として3分の1
※給付金(月額)の上限は、法人が50万円、個人事業者が25万円
※複数店舗を運営する事業者は例外措置が適用され、給付金(月額)の上限が法人100万円、個人事業者50万円となる

※経済産業省発表の資料を基に作成

具体的にいくらもらえるのか、支払家賃を100万円として、複数店舗を運営している法人で計算してみよう。

75万円(法人の上限額)×3分の2(給付率)=約50万円
25万円(超過部分)×3分の1(給付率)=約8万3000円
(50万円+8万3000円)×6カ月=約350万円

単純計算だが、3.5カ月分の家賃が支給されることになる。最大限まで活用すれば、複数店舗を借りている事業者は最大600万円まで受け取ることも可能だ。詳細な条件や申請方法はいまだ明らかになっていないが、申請開始時期について経産省は「最速で6月下旬以降、給付は7月以降になる予定」とホームページに記載している。

テナントの家賃支援を巡っては、国土交通省が3月31日、売上が減少したテナントの賃料支払いの猶予に応じるなど柔軟な措置を取るよう、不動産関連団体に要請を出していた。しかし、オーナーに対し一方的に負担を強いるものであったため、同省は4月17日、固定資産税や都市計画税を減免するなど、オーナーに対するメリットを提示。しかし、減免の対象となるのが2021年分であるなど、オーナー視点では十分な措置とは言い難い内容であった。

今回は家賃を対象とした直接的な給付制度ではあるが、オーナー目線では気になる点もある。それは、給付金が正しく家賃の支払いに使われるかということだ。

楽待新聞では5月中旬、自民党のプロジェクトチームで賃料支援策のとりまとめにかかわった同党の木原誠二衆院議員にインタビュー取材を行っている。今回の制度について、同インタビュー内で木原氏は「1度に6カ月分給付することは、ある種のモラルハザードにもなるし、オーナーにきちんと渡らない可能性がある。そのため、一定程度、複数回に分けて、領収書などで支払いを確認しながらお出ししていくスタイルになると思われる」と、オーナーの不安を解消できるようシステムを構築したいと方針を示した。

「住居確保給付金」のようにオーナーに直接支払われるのか、それとも事業者に支払われるかはまだ分からない。詳細については、続報を待ちたい。

自治体に広がる家賃支援の輪

テナントの家賃支援に動く自治体の独自施策もチェックしていきたい。楽待新聞でも5月3日に、各自治体の独自支援策をまとめたが、それ以降、新たに同様の取り組みを始めた自治体の一例を紹介しておく。

<テナント向けの支援・町田市>
金額:家賃支払済額の2分の1(1カ月上限20万円で、最大2カ月分)
対象:売上高が前年同月比と比較して15%以上減少した、市内に事業所がある中小企業者など一定の要件を満たすもの
受付:2020年5月19日~2020年7月31日
詳細:https://www.city.machida.tokyo.jp/jigyousha/shien/rentoffice.html

<テナント向けの支援・愛知県豊橋市>
金額:売上減少率に応じて、最大20万円
対象:2020年2月~5月までの任意の2カ月の売り上げが前年比30%以上減少した、市内に事業所がある中小企業者
受付:2020年7月31日まで
詳細:https://www.city.toyohashi.lg.jp/14352.htm

<オーナー向けの支援・港区>
金額:減額した家賃の2分の1(1カ月・1物件あたり15万円を上限、最大3カ月分)
対象:新型コロナの影響で売り上げが減少している店舗に対し、家賃を減額しているオーナー
受付:2020年6月1日~2020年9月15日
詳細:https://www.city.minato.tokyo.jp/keieisoudan/chinryojosei/josei.html

<オーナー向けの支援・千葉県千葉市>
金額:減額した家賃の10分の8(1カ月、1テナントあたり50万円を上限、最大2カ月分)
対象:県から発出された休業要請に応じた中小企業者、または休業に準ずる影響を受けている飲食店のうち中小事業者の店舗に対し、家賃を減額しているオーナー
受付:2020年4月28日~2020年6月30日
詳細:https://www.city.chiba.jp/keizainosei/keizai/kigyoritchi/covid19-tenant_kyouryokukin.html

こういった地域ごとのきめ細やかな支援策や事業を後押しできるよう、「地方創生臨時交付金」の拡充も補正予算案に含まれている。今後も、各自治体による家賃支援施策の強化が期待される。テナントに賃貸をしているオーナーは、テナントがある自治体のHPも定期的にチェックしてみてほしい。

「家賃を減額してほしい気持ちは分かる」飲食店主兼大家の意見は

コラムニストの「戸建て飲食店主」さんは、戸建て10戸、区分1戸を所有するオーナーでありながら、自らも飲食店を約19年経営している。言わばオーナーとテナント、両方の気持ちを理解できる立場である。そんな戸建て飲食店主さんも、コロナの影響で打撃を受けた1人だ。3月から客足が遠のき始め、4月は売り上げが約4割減少した。5月は県からの休業要請を受け、1カ月ほど休業した。休業要請協力金の申請を5月中旬に行ったが、まだ入金はないそうだ。

PHOTO:Sanga Park/photo

戸建て飲食店主さん自身は、所有物件で飲食店を運営しているため、家賃は発生していない。以前は毎月18万円の家賃を払い、店舗を借りて運営していたが、ある日大家から「今借りている店舗を買わないか」と言われ、購入を決めた。もし今も賃貸だったら、と考えると「相当しんどいでしょう…」と話す。

「家賃を支払って店舗の運営しているときは、『どうして営業日数が少ない月も、家賃は変わらないんだ!』なんて思ったこともありましたから(笑)。今はそんなこと思わないですが、こういった一種の災害のような事態では、家賃を減額してほしいと願うテナントの気持ちも分かります」。

そんな中、今回の「家賃支援給付金」を含む国の支援策については「かなり手厚い」と感じているという。「個人事業主の飲食店主などは特に、好きでお店を始めたのだから、投資と同じで自己責任だと思っているんです。それなのに、持続化給付金で100万円給付されるとか、自治体の支援策とかもある。報道ではさまざまな意見が取り上げられていますが、手厚い支援策もあり、実は私も、私の周りのテナントもそこまで悲観的ではありません」(戸建て飲食店主さん)

戸建て飲食店主さんのお店では6月1日から営業を再開。開店を待っていた常連客がきたおかげもあるか、想像よりは悪くないリスタートを迎えた。しかし、取材日時点ではまだ営業再開から3日足らず。1カ月後どうなっているかは分からない。

「不動産収入と店舗運営の資金は分けて考えたい」という戸建て飲食店主さんは、融資などを活用し、店舗運営の資金繰りに動いているという。「宴会を開く居酒屋や、インバウンド需要が支えていたお店は長期的にしんどい状況が続くでしょう」。外出自粛ムードは徐々に解けてきたようだが、他者と距離が近い店舗を避ける人もまだまだ多い。テナント物件を抱えるオーナーと、家賃支払いの不安は長い付き合いになりそうだ。

「知らないテナントには積極的に案内を」

こうした支援策が用意されていても、情報収集ができず、給付金の存在を知らない、あるいは申請方法が分からないといったテナントもあるだろう。せっかく用意された制度も、きちんと利用できなければ無意義になる。オーナー側も各種制度を理解しておき、積極的にテナントに周知する必要があるだろう。

1棟商業ビルを所有し、飲食店を含むテナントの自主管理を行うコラムニストの「じゅんじゅん」さんは、各テナントに対して積極的に制度の案内を行っている。そんなオーナーの姿勢を受けてか、各テナントもなんとか家賃を振り込めないか、必死に動いてくれている。

「新しい制度は、インターネットで詳しい情報を仕入れるようにしています。テナントさんに案内できるように資料を準備していますし、家賃支援給付金も申請できるようになればすぐに案内したいです」

中には日本語が苦手なテナント店主もいるため、申請書類の作成を手伝ったり、金融機関に同行したりするなど、徹底的なサポートを行っている。時間も手間もかかるが、運営資金が手に入る店子、家賃収入が手に入る大家の双方にとって、良い結果につながっていくのだろう。

更新され続ける支援策

いまだ全国各地で新規感染者が増え続ける新型コロナウイルス。緊急事態宣言は5月末に解除されたものの、再び感染者が増加したことを受け、東京都では「東京アラート」を発動。これまで通りの生活を送れる日はまだまだ先になりそうだ。

こういった新型コロナの影響を受け、前述した「家賃支援給付金」以外にも、個人や法人向けに支援策が打ち出されている。個人と法人それぞれでどのような制度が設けられているのか、改めて確認してほしい。

※雇用調整助成金と無利子融資は、第2次補正予算で拡充が予定されています(クリックして拡大)

給付までのスピードや、複雑な申請方法などにさまざまな指摘があるが、資金繰りに悩む事業主や個人が申請しやすいよう、情報は日々更新され続けている。しかし、いずれもその情報を知らなければ申請することはできない。まだ知らない制度があった方は、管轄の省庁に問い合わせたり、自治体に確認したりするなど、できることがあるか探してみてほしい。

6月に入り、街は少し賑わいを取り戻したようにみえる。経営の立て直しができるか、あらゆる事業主にとって、これからが正念場だ。オーナーは、家賃滞納リスクの長期化を見据え、どんな支援策が使えるのか、店子と一緒に探っていくことも時に必要になるだろう。

各種助成金制度の拡充を盛り込んだ第2次補正予算案は、本日8日、政府が国会に提出した。一部報道では「11日にも成立か」と発信されている。楽待新聞では引き続き、家賃に関する支援策を取り上げていく。

(楽待新聞編集部)

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June 08, 2020 at 04:03PM
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