皮膚に塗ったり貼ったりして使用するタイプの薬剤の応用範囲拡大につながる研究成果を、薬学部の押坂勇志助教が今夏開かれたアカデミックフォーラムおよび2本の論文「Design of an ante-enhancer with an Azone-mimic structure using ionic liquid」(Pharmaceutical Researchに2023年4月掲載)、「Design of ionic liquid formulations with an Azone-mimic structure for enhanced drug skin permeation」(Journal of Pharmaceutical Sciencesに2023年12月掲載)で発表し、製薬会社や化粧品会社などから注目を集めています。
経皮吸収型製剤は皮膚に貼付・塗布するだけで簡便に使えることから、患者本人だけでなく看護者や介護者も投与を確認しやすいなど、飲み薬や注射にはない利点があります。その一方で、皮膚の表面を覆う角層がバリアとなるため、分子量が大きかったり脂溶性が低かったりする薬物には適さず、利用範囲が限られています。そうした問題の解決策として、吸収促進剤の開発が1980年代から活発に進められてきましたが、既存の促進剤(Azone)は角層下に吸収されたあとに皮膚刺激を起こしやすく、腫れや赤みなどが生じさせることがあり、未だ実用化にいたっていません。
押坂助教は、経皮吸収用ドラッグ・デリバリー・システム(TDDS)への応用で効果が期待されているイオン液体に着目しました。陽イオン物質(カチオン性物質)と陰イオン物質(アニオン性物質)で構成されるイオン液体は融点が低く、室温で液体の状態にあります。薬物をイオン液体化することで疎水性が向上し、吸収率が高まることに加え、溶けにくい薬剤の溶解が可能になります。押坂助教はカチオン性物質であるε-caprolactam(イプシロン カプロラクタム)とアニオン性物質のmyristic acid(ミリスチン酸)を選択し、構成を工夫することで、Azoneの構造に類似したイオン液体「IL-Azone」を調製することに成功しました。
「IL-Azone」の効果をウサギの背部(刺激性)およびブタの耳の皮膚(透過性)で実験したところ、皮膚への刺激性はAzoneより低いことが明らかになりました。透過性は、IL-Azoneを白色ワセリンに含有したところ、Azoneを上回る吸収促進効果が認められました。さらに、製剤中に水を使うことができないこともIL-Azoneの応用の幅を広げるうえでの課題でしたが、これに関しても白色ワセリンを使用することによって、水を使わずに製剤化することにも、成功しました。
角層では薬剤の吸収を促し、角層下ではε-caprolactamとmyristic acidに分解して刺激を与えない構造のIL-Azoneは今後、薬剤だけでなく化粧品やサプリメントなどへの応用も期待されます。押坂助教は「経口剤のように肝臓で代謝されることなく、全身に薬剤を送り届けることができるという点でも、経皮吸収型製剤は優れています。今後さらに研究を重ね、実用化を目指していきます」と話しています。
押坂助教はまた、抗酸化作用や肌のメラニン生成を抑える作用のあるアスコルビン酸(ビタミンC、VC)をイオン液体化することで安定性と透過性を高める研究でも成果を上げており、医療・美容分野での応用が期待されています。
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