文章作成や翻訳などに大きな威力を発揮する対話型生成AI(人工知能)の「ChatGPT(チャットGPT)」が話題だ。これを投資情報の収集や有望銘柄の発掘に活用できないだろうか。挑戦を始めた個人投資家の事例を紹介する。
ユーエスさん(ハンドルネーム)は中長期目線で米国のグロース(成長)株を売買する個人投資家だ。日本ではほとんど知られていない銘柄を投資の対象としているので、米国の投資情報サイト、企業IR(投資家向け広報)サイトなどで英語の情報を入手して投資に役立てている。
米株の決算チェックに活用
集めた情報はツイッターでも発信している。この情報の収集・要約・発信という一連の作業に最近、ChatGPTを使い始めた。
ユーエスさんは仕事でも英語を使うが、何十社もの英語の情報を読むのは翻訳ソフトの力を借りてもかなり大変だった。ところがChatGPTなら、「このサイトに掲載されている決算説明会の書き起こし文から、アナリストによる質疑応答コーナーの部分を抜き出し、日本語で内容を要約して」という指示を出すだけ。調査会社のリポート、ニュースなどもChatGPTで処理している。
「出力内容の確認は必要だが、翻訳精度も問題なし。作業時間は10分の1以下になった。チェックできる銘柄の数が格段に増え、これはと思う銘柄を見つけやすくなっている」と満足している。
師匠ではなく「投資の相棒」に
ユーエスさんは、米国のニュースや個人投資家が発信する情報を参考に、情報収集以外のChatGPT活用法も検証している。
例えば、個別株に関するニュースの見出しから売りか買いかを診断する、投資テーマを与えて関連する有望個別株でポートフォリオを組む、交流サイトの書き込みから話題になっている銘柄や投資家のセンチメント(心理)を知るといった使い方だ。
ただ、現状では難があることも確か。「出力にかなり癖がある。その投資テーマで、その銘柄はないだろうといった具合に、明らかな間違いではないがバイアスがかかったような回答もある。参照している情報源の問題だろうが、指示の内容を工夫するなど使いこなしは必要」と指摘する。
ユーエスさんは、究極的には米国市場の概況からセクター情報、そして動きのある銘柄と、マクロからミクロまでの情報を網羅的に収集して要約するような仕組みを作りたいと考えている。「ChatGPTがプログラムを自分で作ってデータを分析する機能も実装されたと聞いている。ぜひ挑戦したい」と進化に期待する。
一方、「お宝株を教えて」といった使い方は期待していない。「仮説を立て、長期目線で銘柄を選び、前提が崩れたら売るのが自分の投資スタイル。ChatGPTを投資の師匠にしてしまったら、仮説や前提がブラックボックスになり、売り時も分からなくなる」
仮説を立て、必要なデータを与え、この銘柄への投資を考えているがどう思うかと問いかけて、有用なアドバイスを受ける。「投資の相棒」のような形でAIと付き合っていけたらと考えている。
ユーエスさんのChatGPT活用例
活用例① 米国企業の決算説明会の内容を日本語に翻訳して要約する
米投資情報サイト「Seeking Alpha」には、各社の決算説明会の書き起こしテキストが掲載されている。有用な投資情報が含まれているのだが、英語の会話文の上に、文章量も膨大だ。
ChatGPTに対して書き起こし文が掲載されているページのURLと、日本語で要約しろという指示を与えると要約文が表示される。この部分をもっと詳しくなど、深掘りを指示することも可能。
ただしChatGPTは2021年までの情報しか学習していないので、ウェブ情報を参照するプラグイン(機能拡張ツール)などが必要だ。
【必要環境】ChatGPT-4+WebPilot(WebPilotはウェブサイトの最新情報を回答の情報源として活用するためのプラグイン)
活用例② AIの普及で株価上昇が期待できる有望な個別銘柄を探す
プラグインを追加すれば投資テーマから有望株を探すといったことも可能。投資用のプラグインは複数あるが、ユーエスさんが検証したのが金融ベンチャーの米グローバル・プレディクションが提供する「PortfolioPilot」。
銘柄の選択には同社のロジックを使う。対応しているのは米国とカナダの株式のみ。
ユーエスさんによると、提示される銘柄は「かなり微妙。バイアスがかかっている印象」とのこと。日本株への対応も含め、今後の進化に期待したいとのことだ。
【必要環境】ChatGPT-4+PortfolioPilot(PortfolioPilotは株、投信、債券など個人の資産のポートフォリオを分析したり、マクロ経済のトレンドなど情報源にした投資情報を提供したりできるプラグイン)
(本間健司)
[日経マネー2023年9月号の記事を再構成]
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