2023年に入り、アクティビスト(物言う投資家)の保有報道や中期経営計画で注目度が高まっている 大日本印刷。北島義斉社長は核である印刷技術を応用して伸ばせる新規事業や成長分野に積極投資していく意向だ。
同社は12日に公表した新中計で、将来的に営業利益1300億円以上を目指す方針を掲げた。これに先立ち北島社長は4月20日のブルームバーグのインタビューで、06年3月期に計上した過去最高益の1206億円から見ても「かなり高い目標」との認識を示し、達成には「事業ポートフォリオを大きく変える必要がある」と述べた。前期(23年3月期)営業利益は612億円。
その一環として、成長事業分野での企業の合併・買収(M&A)や、事業スピンオフ(分離・独立)の可能性も含め検討する考えだ。現在の成長分野であるエレクトロニクスだけでなく、従来のパッケージや建材の分野でも環境対応などで新しい機能や付加価値を付けて「利益率を高めていきたい」と語った。
アクティビストの米 エリオット・マネジメントが大日印の株式を5%弱保有したと1月に報じられ、株価は急騰。株式市場全体の値動きを示すTOPIXの年初来上昇率が10%という中、同社株は48%上昇し、時価総額は1兆円台を回復した。12日の株価は前日比1%高の3965円と、終値ベースで06年5月17日以来の高値を付けた。
3月に発表していた新中計の骨子では、光学フィルムやメタルマスクといったデジタルインターフェース関連や半導体関連などの注力事業に5年間で2600億円以上を投資する方針を掲げた。株主資本利益率(ROE)は将来的に10%以上(前期7.9%)を目標とし、株価純資産倍率(PBR)1倍超を早期に実現する。3000億円の自社株買いも計画した。
エリオットは株主還元策を歓迎する 声明を公表した。北島社長は新中計と併せて資本政策も発表したことについて、東京証券取引所のPBR1倍割れ是正の対応要請なども要因と説明。また、エリオットだけを意識したのではなく全ての株主と対話を重ねているとし、「株価も上がった。われわれが目指す方向をある程度理解をしていただけたのでは」と受け止めている。
発表した新中計によると、注力事業の戦略として、生産能力の拡大で有機ELディスプレー製造用メタルマスクに約200億円、超広幅光学フィルムなどに130億円以上を投資する。半導体事業では、国内外のフォトマスクなどに200億円以上を投資する。主力製品のリチウムイオン電池用バッテリーパウチは25年までに売り上げ1000億円を目指す。
ゴーディアン・キャピタル・ジャパンの西村光彦シニアポートフォリオマネジャーは、中計で具体的な数値目標を掲げ、株主と対話する姿勢を示したことを評価。「今の時点では100点満点ではないが、前に進んでいるという限りではポジティブ」に捉えていると述べた。
ガバナンスに向けられる厳しい視線
財務面での施策で評価を得た同社に対し、ガバナンスには厳しい視線が向けられている。大日印の社長は、18年6月に就任した現社長まで、創業家出身ではない北島家が過去3代、約70年にわたって務めている。ブルームバーグのデータによると、時価総額1兆円以上の東証プライム上場企業で創業家以外の同姓の経営者が3代連続で選任されているのは大日印のみだ。
慶應義塾大学大学院経営管理研究科でコーポレートガバナンス(企業統治)の研究をしている 齋藤卓爾教授は、政策保有株を減らす流れの中でガバナンスを強く意識する機関投資家の持ち分が上昇したと分析。その結果、北島家の株式保有比率が低いにもかかわらず経営権を世襲していることについて、説明が求められるようになっていると指摘した。
大日印の場合、経営が成功しているとも失敗しているとも言えず、役員報酬が高額な上に世襲となると外部への説明がつかないとの見解を示す。
こうした批判に対して北島社長は「それだけで批判をされるものでもないと思う。一定に成長していければ投資家の期待に応えているのではないか」と述べた上で、世襲を意識しているわけではないとした。
慶応大の齋藤氏は、世襲企業は「リーダーシップが強く、変わらないといけない時にぐっと変われる可能性もある」と話し、会社を変革させることができれば世襲をしていても認められることはあるとみている。
(決算などの発表を受けて7段落を追加、2、4段落の内容や株価を更新します。)
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