物流業界を革新する製品やサービスの開発に、東海地方の企業が力を入れている。自動車部品の製造などで培った技術を応用し、作業の自動化や脱炭素化の実現につながる商品の投入が相次ぐ。(佐藤一輝)
■顧客増狙う
13日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した国際物流総合展。各社がセンサーを用いた現場の安全確認装置などを紹介するなか、注目を集めたのが、愛知機械テクノシステム(名古屋市)が開発した荷物を自動で運ぶ「無人搬送車(AGV)」の最新機だ。
長さ2・4メートル、幅0・2メートル、高さ0・1メートルに薄型化し、台車の下に潜り込んで持ち上げて運搬する。搬送後、台車の下をすり抜けて後進できるため、台車を前から引っ張るAGVと異なり、倉庫内に余分なスペースが生じることなく、台車を並べることができる。年内の発売を目指している。
同社は自動車用エンジンや変速機を手がける愛知機械工業(同市)のグループ会社で、AGVも自動車部品で培った耐久性の高さが特徴という。現在は自動車メーカーが主な取引先だが、担当者は「自動化の進む物流業界にも顧客を増やしたい」と意気込む。
現場の効率化につながる展示も目立った。アイシンはカーナビを開発したノウハウを生かし、安全で効率的な配送ルートを自動で作成する運送業者向けシステムを公開した。デンソーソリューション(愛知県刈谷市)も、車両点検や社員の運転免許更新の時期をクラウド上で一括管理するシステムを披露した。
■人手不足で需要拡大
各社が物流業界を支える商品に力を入れるのは、需要が急拡大しているためだ。国土交通省によると、2021年度の宅配便の取扱個数は49億5300万個で、10年前の1・4倍に増えた。ネット通販の普及の影響が大きく、通販全体の売上高は20年度に初めて10兆円を突破した。
一方、物流の現場は、人手不足にあえいでいる。帝国データバンクの7月の調査では、運輸・倉庫業の企業で正社員が「不足している」と回答した割合は、前年同月比12・3ポイント増の59・4%に上り、全産業の平均(47・7%)を大幅に上回った。高齢化も進んでおり、省人化の支援は大きな商機となっている。
自動車部品メーカーにとっては、新たな収益源の確保が急務という事情もある。EV(電気自動車)が今後さらに普及すれば、エンジン関係などの部品が不要になり、「業績に大きな打撃を受ける」(大手関係者)可能性が高いためだ。
■価格3割下げ
物流展では、脱炭素社会を見据えた製品も登場した。豊田自動織機が13日発売したフォークリフトは、水素を燃料に使い、稼働中に二酸化炭素(CO2)を排出しない。トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「ミライ」との部品の共通化などで、価格を従来の水素式の機種より3割下げた。
フォークリフトは市場の約6割が電動式だが、発電過程のCO2排出も考慮すれば、水素式の方が、より環境への負荷が小さい。電動式が充電に数時間かかるのに対し、水素の
ただ、豊田自動織機が16年に初めて投入した水素式の機種は、累計販売台数が400台程度にとどまる。高額な水素スタンドへの投資がネックになっているとみられる。
今後、水素をトラックで各施設に運搬するなどの手法を検討するといい、一条恒・経営役員は「使いやすい方法を編み出し、脱炭素実現に向けた選択肢を増やしたい」と話している。
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