2022年05月13日03時06分
内面をフッ素で覆った微細なナノチューブを開発したと、東京大大学院工学系研究科の伊藤喜光准教授や院生の佐藤浩平さん(現東京工業大助教)らが13日付の米科学誌サイエンスに発表した。塩水の場合、塩を通さずに水だけ通す効率が非常に高く、海水を淡水化する次世代水処理膜への応用が期待される。
このフッ素化ナノチューブはドーナツ状の化合物を積み重ねて筒状にしたもので、内面がフッ素で覆われた穴の直径が0.9ナノメートル(ナノは10億分の1)、外側の直径が5.2ナノメートル。塩水では塩の塩化ナトリウムがプラスのナトリウムイオンとマイナスの塩化物イオンに分かれており、ナノチューブ内面のフッ素がマイナスを帯びているため、塩化物イオンを通さない。全体として電気的な中性を保つ性質があり、プラスのナトリウムイオンだけが密集して穴に入ることはない。
一方、水がこの穴を通る際はフッ素の影響で個々の分子にばらけるため、高速で通過する。動植物などの細胞膜で水だけ効率良く通すたんぱく質「アクアポリン」(穴の直径が0.3ナノメートル)に比べ、水を通す速さは4500倍という。
伊藤准教授によると、フッ素化ナノチューブをびっしり並べた水処理膜を実現できれば海水の淡水化が容易になるが、製造効率やコストが課題になる。既存の水処理技術に組み合わせる応用が有望だという。
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