9月20日、研究本館小林ホールにて令和5年度第3回技術セミナーが開催されました。タイトルは「光ファイバーの基礎と光ファイバーの応用事例」でした。光ファイバーはKEKで行われているさまざまな実験のみならず、日常生活においても欠かせない物となっています。講師には、日本電信電話(以下、NTTと略称)アクセスサービスシステム研究所の半澤信智氏(アクセス設備プロジェクト先端媒体グループ主任研究員)をお迎えしました。アクセスサービスシステム研究所は、つくば市花畑にあり、KEKつくばキャンパスとはご近所同士です。この企画は令和4年度から提案されていましたが、今回ようやく実現しました。
セミナーでは、まず半澤氏が専門である通信用の光ファイバーについて、分かりやすく説明をしました。光ファイバー内を光が伝搬する原理に始まり、専門用語の解説(シングルモードファイバーとマルチモードファイバー、ゲルマニウムドープ、波長分散と分散曲線、伝送容量、非線形など)を交え、通信用光ファイバーの歴史、すなわち1960年代から現在に至るまで年代ごとにあった開発の中心課題とそれをどのような技術で克服していったかなどの詳しい説明がなされました。また、あらかじめKEK実行委員から資料を提供したビームロスモニターで使われる光ファイバーについて、専門家から見た特徴などの解説をしていただきました。
休憩をはさんで、後半はファイバーの応用が話題になりました。まず現在通信用光ファイバーで使われているシングルモードファイバーの伝送容量が限界を迎えている現状であり、ファイバーの破壊現象を示す実験の動画が示された後、現在開発が進められている各種のファイバー(マルチコアファイバー、モード多重伝送ファイバー、中空コアファイバー)の解説がなされました。最後に、通信以外に使われている光ファイバーとして、センシングの応用(温度センサー、3次元形状同定、振動検知)、パワー伝送(加工用レーザーの伝送)、イメージング(内視鏡)、計算機応用(最適化問題を解く例)が紹介されました。
講演の後、活発な質疑応答が行われました。光ファイバーについて、現在はゲルマニウムがドープされているが開発者の話では他にリン、ホウ素や、周期律表を眺めて材料を試したこと、現在のシングルモードファイバーの価格が安すぎること、インフラで使用されているファイバーの寿命は50年と言われているが設置場所の環境に左右されるので正確な耐用年数は出せないこと、分散シフトファイバーは企業側にメリットがないので入手が難しくなっていることなどをお話しいただきました。KEKの仕事に関わる内容として、NTTではマルチコアファイバーを用いた形状センシングの開発を東大と共同で行っていること、極低温測定用の温度センシングファイバーの利用については、ファイバー自体は問題無いが、被覆となる樹脂が変質しないか気になるとのお話をいただきました。
今回のセミナー参加者は全部で43名、うちKEK32名、他11名(核融合科学研究所、国立天文台、基礎生物学研究所、秋田大学、大阪大学)でした。
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