京都大の山中伸弥教授(60)が、世界で初めて報告したiPS細胞。山中さんのノーベル医学生理学賞の受賞から、昨年12月で10年がたちました。新たな治療法としての応用も、次々と試みられています。iPS細胞にはどんな特徴があり、なぜ「医療の未来を大きく変える」と期待されているのか、解説します。
Q iPS細胞とは?
A 人体を構成する様々な細胞に変化できる能力を、人工的に持たせた細胞のことだ。英語で、induced pluripotent stem cell(人工多能性幹細胞)の頭文字を取って命名された。
人体を構成する細胞は約37兆個あると言われている。皮膚なら皮膚の細胞、筋肉なら筋肉の細胞……というように役割が違い、それぞれの役割が果たせるように、細胞が持っている機能も違う。
iPS細胞は、適切な条件で育てることで、皮膚や筋肉の細胞はもちろん、神経や血液などあらゆる細胞に変化することができる。そのため「万能細胞」と呼ばれることもある。
Q iPS細胞はどうやってつくるの?
A 皮膚や血液の細胞を採取して、その細胞に複数の遺伝子を導入してつくる。
山中さんらが最初に報告したのは四つの遺伝子だった。その遺伝子のうち一つが、がん化の可能性を高めると考えられるものだったこともあり、京大iPS細胞研究所では、いまでは別の遺伝子を使う方法にしている。
すでに役割が決まった(=プログラムされた)細胞を、もう一度、何にでもなれる細胞に戻すので、この現象は「リプログラミング」と呼ばれる。
2006年に、山中さんのグループが、マウスの細胞からiPS細胞ができたと報告。翌07年には、ヒトのiPS細胞の作製に成功した、と発表した。
12年には山中さんがノーベル医学生理学賞を受賞した。受賞理由は、「成熟した細胞を多能性細胞にリプログラムできることを発見した」ためだった。
Q 「リプログラミング」の…
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