新年を迎え、北京市朝陽区にある秋果ホテルの亜運村国家会議センター店には客足が戻り始めていた。一番忙しくなるのは正午の時間帯で、ホールでは箱型のロボットが人々の注目を集めていた。「エレベーターが到着しました。私は料理を配膳するスタッフです。道を開けてください」というはっきりと聞き取りやすい音声と共に、ロボットは程よい速度でエレベーターの中へと移動していった。そして、3階でエレベーターを降りたロボットは、部屋番号「8303」の部屋のドアの前できっちり止まると、自ら電話をかけて、「お客様、料理が届きました。どうぞ素敵なお食事時間をお楽しみください」と伝えた。
ホテルで物品を搬送するロボット「9号方糖」(撮影・王英弛)。
「9号方糖」という名のこのロボットについて、同ホテルの劉秀秀総支配人は、「新型コロナウイルスの影響で、人手不足となっている。でも『方糖』が24時間休まずに働き、配膳の仕事の大半を受け持ってくれているので、本当に助かっている」と褒めそやした。
賢く、信頼できる「方糖」の背後には、すい星のごとく現れた新職業「サービスロボット応用技術者」の存在がある。2021年3月、中国人力資源・社会保障部(省)などの当局が発表した「新職業」には、サービスロボット応用技術者が含まれていた。
サービスロボット応用技術者とは?
「端的に言うと、ロボットがより良いサービスを提供できるようにするのがサービスロボット応用技術者」と話す楊越さん(30)は、九号公司・商用ロボット事業部のプロダクトオーナーで、サービスロボット応用技術者でもある。
この職業は数年前にはまだ人々にとってなじみの薄い職業だった。楊さんは、「私は工業デザインが専門だった。でも、ロボットを商業施設やレストランでよく見かけるようになり、今後はそれが発展するトレンドになるだろうと感じて、進んでサービスロボットの業界に転身した。ここ数年、サービスロボットの日常生活におけるサポートやセキュリティパトロール、新型コロナウイルス対策といった応用シーンにおける活躍ぶりを目にしてきた。機能のアップグレードや運営・メンテナンスなどの人材ニーズも高まり続けている」と話す。
エンジニアとしての楊さんは、サービスロボットの各種機能を継続的に調整し、最適化しなければならない。「サービスロボットは新たに登場したばかりで、人間の世界に融け込もうとした時に、多少のぎこちなさがあるのは当然のこと。サービスロボットと人間の間に橋を架けて、できるだけシームレスにし、最も快適な体験をユーザーに提供するのが私たちの仕事」と説明する。
サービスロボットの製品構造を分析する楊越さん(撮影・王英弛)。
ハイテク業界に身を置く楊さんが最も関心を寄せるのは、技術そのものではなく、いかに人の気持ちが分かるロボットにするかという点だという。楊さんは、多くの時間を割いて、実際に現場に足を運んで、異なるポストや立場を体験して、調査・研究を重ね、ロボットがより良いサポートを提供できるかを探っている。
「ロボットが、冷ややかでぎこちないサービスを提供するのではなく、本当の意味で人々に便利で楽しいサービスを提供し、素晴らしい生活に知恵と力を貢献することを願っている」と楊さん。
新型コロナウイルス対策が講じられている期間中、楊さんの会社の業務も一定の影響を受けていたものの、「ピンチはチャンス」と言われるように、サービスロボットを使うと「無接触で物を受け取ることができる」という特徴が、中国内外の消費者の間で評価され、市場が瞬く間に切り開かれた。
楊さんは同僚と共に、懸命な研究を重ね、新たな成果を次々と実用化している。
「例えば、当社が開発した視覚をメインとしたマルチセンサー室内位置測定技術を使うと、ロボットは、各階のちょっとした違いをスマートに検知できるため、迷いにくくなる」と楊さん。そして「レーザー・レーダー、サウンドセンサー、衝突センサーなどを総合的に活用して、サービスロボットがセンチメートルレベルで障害物を回避できるようになっているため、より安全で信頼性が高くなっている。弛まぬ努力を通じて、病院の薬品運搬、ホテルの物品搬送、レストランの配膳といった、複数のロボット応用シーンを開発した」と説明する。
北京三里屯太古里商業区をパトロールするスマートロボット(2022年8月27日撮影・羅偉/写真著作権は人民図片が所有のため転載禁止)。
サービスロボット市場の規模は近年、拡大し続けている。2021年、中国のサービスロボットの生産台数は前年同期比48.9%増の921万4000台だった。ロボットが幅広く応用されるようになるにつれて、市場の専門スキルを具えた人材のニーズが高まり続けている。
北京華航唯実機器人科技股份有限公司商品研究開発部の何智勇最高技術責任者(CTO)は取材に対して、「中国の質の高い発展のみなぎる活力が、サービスロボット応用技術者という新職業を育成し、それを拡大させたと言える。それはまた、中国のヒューマンリソース供給がさらにハイレベル、ハイクオリティへと前進していることをも示している。サービスロボット応用技術者の育成を加速させることで、人間の代わりにロボットが簡単なルーティンワークをこなせるようになるほか、創造性に富み、付加価値の高い大量のポストができ、雇用の構造的問題が解決され、さらに競争力を具えた人材チームの形成につながるだろう」との見方を示している。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年1月18日
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