応用情報技術者試験はCBT方式で受験できるのか?

国家資格であり、IT系資格の中でも難易度が高いことでも知られている応用情報技術者試験ですが、受験に際しては試験用紙を使用した筆記試験を採用しています。大半のIT資格の試験が、PCを利用したCBT方式を採用している中、なぜ応用情報技術者試験は筆記試験のままなのでしょうか?
本記事では、試験そのものの特徴やCBT方式についてわかりやすく説明していくとともに、その理由を独自に考察していきます。
応用情報技術者試験とは

まずは、応用情報技術者試験についてその概要を説明していきます。
同試験は情報処理推進機構(IPA)が主催している情報処理技術者試験の1つであり、難易度としては4段階の内、上から2番目に難しいものです。応用情報技術者は、ITに関する知識や技能が一定水準以上であることを証明する資格であり、国家資格として認定されています。
試験の概要
応用情報技術者試験は午前と午後の2部構成であり、それぞれが2時間半の長丁場です。対象者が「高度IT人材としての方向性を確立した者」と定義されているだけあって、試験内容も理論から経営まで幅広いIT分野から出題されます。
午前問題は選択式であり、知識を問われる時間勝負の試験です。一方、午後問題は全11問から5問を選択して解答する記述式で、かなりの長文で記述式でもあり特に難易度が高いため、本試験の鬼門とも呼ばれています。
なお、本試験は会場にて行われる筆記試験形式であり、パソコン上で試験が完結するCBT方式を採用していません。
試験の申し込み方法
応用情報技術者試験は年に2回春季と秋季に実施されており、令和4年度の場合だと4月と10月の日曜日に実施されます。受験するための申込には期限があり、それぞれの3カ月前である1月・7月中に受付を行わなければなりません。
受験回数の少なさや申し込みから受験まで時間がかかることから、計画的に受験計画を立てなければならない試験であることがわかります。ちなみに受験料は7,500円(税込)です。
【参考】:情報技術者試験の日程
試験の合格率
応用情報技術者試験は国家資格であるため、合格の基準も明確に定められています。午前午後ともに100点中60点が合格点です。ただし、午前試験で合格点を取れなければ、午後試験は採点すらされないため、せっかく午後試験を解いたとしても採点結果が分からないまま不合格ということもありえます。
IPA公式の統計データによれば、平成21年から令和4年までの合格率は平均22.1%です。受験者数も多いことを考えても難しい試験であることが分かります。
しかし、企業によっては難易度の高い資格に手当や報奨金を出すところもあり、場合によっては昇進にもつながる可能性もあります。したがって、頑張って応用情報技術者試験を突破すれば年収アップも期待できます。
【参考】:情報技術者試験の統計情報

応用情報技術者試験は難しすぎる?その真偽やメリット、試験対策など
CBT方式とは

ここでCBTという試験方式について、おさらいしていきます。CBTはComputer Based Testing(コンピュータ ベースド テスティング)の略であり、PC上で試験が完結する方式です。ここではより詳しく見ていきましょう。
CBT方式の仕組み
CBT方式はPC上で完結する試験形式ですが、テストセンターと呼ばれる試験会場に行って受験をしなければなりません。似た試験形式であるIBT方式は自宅でも受験できるため、その点でCBTは不正行為が行われにくいという特徴があります。
CBT方式では複数の日程から選んで受験することができますが、近い日程で全く同じ問題が出題されないように、フォームと呼ばれる試験問題のセットから受験者ごとにランダムに出題される形となります。ただし、受験者数が多い試験ではその分膨大なフォームが求められる形になるため、改良されたLOFT方式などが採用されています。
申し込み方法
CBT方式での申し込み方法で通常の試験と異なる点は、上記で述べたように受験日程を複数から選べることです。
申し込み時に希望する受験会場を選ぶとともに、希望する日時を選択します。定員が埋まっていれば、他の日程を選んで予約をしなければなりません。日程が分散している分、受験しやすい日程はすぐに埋まってしまう傾向があるので注意が必要です。
受験日程を選択できる点以外は、通常の筆記試験と同様です。
CBT方式のメリット
CBT方式が採用されている試験は、通常の試験と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。最も大きな点は、前述したように受験日程を柔軟に選択できることでしょう。
通常の試験のように受験の日時が1日に決められているわけではないので、自分の都合の良い日時に受験することが可能です。また、PC上で試験が全て完結することから、誤字や記入ミスも最小限に抑えられることもメリットとも言えるでしょう。
応用情報技術者試験にはなぜCBT方式がないのか

記事前半で述べたように、応用情報技術者試験はCBT方式が採用されていません。そのため、受験の日程を柔軟に決めることができません。
同団体の基本情報技術者試験はCBT方式に対応しているにもかかわらず、CBT方式が採用されていないのはなぜでしょうか。ここでは、その理由について考察していきます。
長文読解の問題がCBTと相性が悪い
CBT方式の特徴として、受験者は複数の日程から受験日を選べます。仕組みの項で説明した通り、近い日程で同じ問題が出題されないよう受験者ごとに回答する問題はランダムです。これは、通常の試験形式に比べて、試験問題自体をより多く用意する必要があることを意味しています。
応用情報技術者試験で出題される午後問題はいずれも問題文が長文読解であり、大問1つ1つが非常に作り込まれています。さらには、選択式でもあるので、受験者が解く以上に分野別に問題のバリエーションを用意しておく必要があります。作り込まれたこのような問題を、毎年試回数以上に作成することは非常に労力がかかるため、これがCBT方式が採用されない大きな理由とも考えられます。
回答方法が完全な記述式
午後問題の回答方法が完全な記述式であることも、CBT方式が採用されない理由であると考えられます。
過去問を参照してみると、問題の回答として数値を記入するだけでなく、字句を記入したり、指定文字以内で記述したりする問題が存在しています。CBT方式において、PC上の回答結果がそのままPC上で自動的に採点が行われると考えると、回答結果に複数の言い回しが存在することや部分点が存在することは、非常に相性が悪いと言えます。
CBT方式における採点を人の手が行うという手段も考えられますが、受験者ごとに回答する問題が異なるため、採点効率が非常に効率が悪くなると推測できます。
試験自体の合格率を上げないため
前述のように、問題の回答形式がCBT方式を採用することに大きな障壁となっていることがわかりました。一方で、回答形式を自動採点に適した形に絞ることで、CBT方式を採用することも可能であると言えます。
しかし、問題形式を選択式や数値回答のみに変えることは難易度の低下を招く可能性があります。CBT方式における出題のランダム化も完璧ではないため、問題自体がリークし、それによって試験合格率が上がるおそれがあります。
応用情報技術者試験は情報処理技術者試験の中でも上から2番目の難易度であり、こうした形で合格率が上がることは資格の品位を落とすことにもなりかねません。こうした懸念がCBT方式の採用を見送っている理由であるとも考えられます。
基本情報技術者試験はCBTで受験可能

応用情報技術者試験はCBT方式で受験できませんが、前述のように、基本情報技術者試験はCBT方式で受験することが可能です。ここでは、この基本情報技術者試験について詳しく説明していきます。
基本情報技術者試験と出題形式
基本情報技術者試験は応用情報技術者試験より1ランク下の試験であり、対象者は「基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」です。出題範囲は応用情報技術者試験と同様に理論から経営まで幅広いですが、内容は基本レベルであり、難易度もそこまで高くはありません。午後問題の解答形式も選択式のみであり、受験のハードルも低めです。
午後問題が応用情報技術者試験と同様に長文形式であるにも関わらず、選択肢の問題のみであることがCBT方式が採用されている理由とも言えます。
【参考】:[基本情報技術者試験の概要(https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/fe.html)

基本情報技術者試験がCBTからIBT方式に?受験方式の違いを解説!
試験の日程と申し込み方法
試験日程は応用情報技術者試験と同様に、年2回と決められていますが、4月〜7月の上期、10月〜1月の下期といった形で広い期間がとられています。このような広い期間がとられている理由はCBT方式を採用しているためです。また、午前と午後を別々の日程で申し込むこともできます。
申し込みの方法は応用情報技術者試験と変わりませんが、受付期間は1カ月前から開始され、実施期間中でも申し込みが可能です。ただし、受付開始からすぐに多くの日程が定員になってしまうので、開始直後すぐに受験日を決めるとよいでしょう。
【参考】:情報技術者試験の日程

基本情報技術者試験の日程は?申し込み方法や注意点についても解説
スコアレポートと試験の合格率
CBT方式を採用しているため、受験後に「スコアレポート」と呼ばれる受験結果を照会することが可能です。午後問題については、問題ごとの選択状況や正答率も参照することができます。
基本情報技術者試験の合格率は、IPAの統計結果によれば、平成21年から令和4年までで平均27.4%であり、応用情報技術者試験と大きく変わりませんでした。合格率に差が見られず難易度に違いがある理由は、受験者層がIT技術に精通していない入門者や学生が多いことが考えられます。
注目すべきはCBT方式を採用した令和3年以降であり、合格率が20%台から40%前後へ大きく増加しています。これはCBT方式を採用したことで、午前と午後試験を分けて集中力を切らさずに受験できるようになったことや、応用情報技術者試験と並行して受験しようとする実力のある受験者が増えたことが考えられます。
【参考】:情報技術者試験の統計情報
応用情報技術者試験は計画的に勉強して突破しよう

本記事で述べたように、応用情報技術者試験はCBT方式を採用しておらず、今後CBT方式が採用される可能性も低いと推測できます。受験に挑む際は、日程が制限されていること、記述式の午後問題の難易度が高いことに注意しておきましょう。記事で述べたように、もし同資格を取得することができれば、資格手当や報奨金を享受できます。
応用情報技術者試験のハードルが高く感じるかもしれませんが、かなり前の段階から受験計画を立て、過去問をベースに勉強を進めれば突破も夢ではありません。

応用情報技術者試験に一発合格するための効果的な勉強法とは?
from "応用" - Google ニュース https://ift.tt/SgYj9c3
via IFTTT
Bagikan Berita Ini
0 Response to "応用情報技術者試験はCBT方式で受験できない?その理由を徹底考察 - アンドエンジニア"
Post a Comment