(本記事は、沖村鋼郎氏の著書『はたらくおうち 賃貸併用住宅──次世代の新しい資産運用のかたち』合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)
住宅ローンとアパートローンの比較
賃貸併用住宅を購入するときは、住宅ローンが利用できます。昨今では、住宅ローンの低金利が続いています。しかし、賃貸併用住宅の場合、住宅ローンが使えるのかどうか、よくわからないと不安に感じている人も少なくないようです。そこで賃貸併用住宅を購入するときのローンの種類や融資条件について解説します。
賃貸併用住宅の場合、「住宅ローンが使えるから得」と聞いたことがあるかもしれません。一方で、「賃貸併用住宅で住宅ローンの融資を受けようとしたら断られた」なんていう話も、インターネットで検索するとちらほら見受けられます。
実は、賃貸併用住宅の場合は、「住宅ローン」とアパート購入の際に使える「アパートローン」の2種類が考えられます。
●住宅ローン
住宅ローンは、「マイホーム」を購入するためのローンのこと。住宅ローンのメリットは、借入期間が長く、低金利という点です。最大35年にわたってローンを返済でき、なおかつ金利が低いため、毎月の返済負担を抑えることができます。
金利は変動金利と固定金利を選ぶことができ、景気の変動に対応しやすい点もポイントです。また、住宅ローンは「住宅ローン控除」の対象となり、毎年の納税の際に節税効果があるため、ほかのローンと比べてお得なのです。
住宅ローンは、不動産投資として使われる賃貸物件には利用することができません。しかし、賃貸併用住宅の場合は、賃貸物件としてのスペースがあるものの、物件の延べ床面積50%以上を自分の住居部分としていれば住宅ローンが利用できます。
●アパートローン
一方のアパートローンは、アパート経営などによる不動産収入を目的とした投資物件を購入するためのローンのことです。金利が比較的高く、変動金利しか選べない場合が多いです。審査基準は、住宅ローンよりずっと厳しいのが実情です。
また、団体信用生命保険が付かない金融機関が多く、万が一のときに借金も残ります。
住宅ローンとアパートローンの特徴を比較すると、表4のようになります。
この表を見ると、まず、金利が住宅ローンとアパートローンでは大きく異なります。住宅ローンなら、0.45~1.5%ですが、アパートローンの場合は、1.0~5.0%と高くなります。
そのため、賃貸併用住宅を建てる際には住宅ローンを選んだほうが断然いいのです。住宅ローンを選ぶことで、低金利、節税などのメリットを得ながら、家賃収入をローンの返済にあて、経済的に負担の少ない生活を送ることができるのです。
中古の賃貸併用住宅には注意!
賃貸併用住宅でも新築よりも、金額面から、中古で売りに出ていないか、気になっている方もいるでしょう。
中古であれば、当然大手ハウスメーカーが手がけるような注文住宅と比べ建物の価格が安いので、賃貸併用住宅を少ない資金で手に入れることが可能です。また、新築で賃貸併用住宅を建てた場合よりもローンの借入額が少なくなることから、返済の負担を軽減することもできます。
中古で賃貸併用住宅を購入するメリットとしてあげられるのが、「すでに賃貸部分に入居者がいた場合、建物を引き継いだ時点から家賃収入を得ることができる」ということです。
しかし実のところ、市場に出回る中古の賃貸併用住宅は数が少なく、気を付けるべきポイントが多くあるのです。
大前提として覚えておきたいことは、「収益が出ている賃貸併用住宅は滅多に市場に売りに出されない」ということです。理由は明確で、収益が出ている賃貸併用住宅ならば、売りに出す必要がないからです。万一、好条件の賃貸併用住宅が販売されていたとしても、すぐに購入されてしまうケースがほとんどです。
長い間買い手がついていない賃貸併用住宅を見つけた際には、特に注意が必要です。
実際に物件の見学に行ってみると、間取りや建物の構造に違和感を覚えることがあります。
中古の場合、購入費以外にリフォームや耐震・耐火対策といった修繕費が発生することも少なくありません。中古の賃貸併用住宅で住宅ローン減税を受けるためには、木造の場合、築年数20年以下という制限があります。コンクリート造の場合、築年数25年以下の建物でなければならないうえに、耐震基準適合証明書といった書類を税務署に提出しなければなりません。この書類発行には3~5万円ほどの手数料が発生しますが、耐震基準証明書をもらうための耐震診断には別途10~15万円ほどの費用がかかります。当然、耐火工事や耐震工事には診断とはまた別に費用がかかるので、当初の予定よりもコストが高くなってしまうことが考えられます。
すでに入居者がいる賃貸併用住宅の場合、空室リスクはなくなりますが、入居者がどんな人物なのかには注意しなければいけません。売りに出されるということは、過去にトラブルを起こしていたり、家賃の滞納が続いていたり、問題を抱えているケースも考えられます。
中古物件の場合、賃貸部分はもちろんオーナーが住む自宅スペースもすでに間取りやデザインが設計されているため、自由度がないのも難点の一つ。購入した後にリフォームや建て直しを行うよりも、新築から賃貸併用住宅を建てるほうが将来的に納得のいくことは多いでしょう。
最近の実例としては、自宅部分に地下室を設けるなどオーナーの好みに合わせた特徴的な賃貸併用住宅の設計が見られます。
新築で賃貸併用住宅を建てる場合、住宅ローンを利用することで東京や神奈川、埼玉といった首都圏の人気の土地にマイホームを持つことができます。
入居者が決まりやすい部屋を造るには、賃貸部分の間取りや設備面での工夫が必要不可欠です。そうすることで周りの物件と差別化され、魅力のある賃貸物件として入居者の募集ができるのです。
以上のような理由から、立地や間取りに自由度の少ない中古物件よりも、綿密な市場調査を行ったうえで新たに賃貸併用住宅を建てたほうが、安定した家賃収入を期待することができるのです。
沖村鋼郎(おきむら・てつお)
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March 06, 2020 at 08:30AM
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