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顔認証技術やスマートフォン関連技術、人工知能(AI)、メタバース、衛星測位技術などの技術を生かした鉄道システムの数々が「第8回鉄道技術展」(2023年11月8~10日、幕張メッセ)に集合した。社会的に人手不足が叫ばれる中、鉄道の運営に関して高まる省人化と自動化のニーズや、その手段となる設備保守管理のCBM(状態基準保全)化にITの応用で対応する動きが強まっている。
次世代改札は「顔パス」主流になるか
最も目立ったのは、複数社が出展した次世代改札機。きっぷや交通系ICカードに加えて、クレジットカードやQRコード、さらに顔認証によって入退場ができる改札機の開発と実用化が進んでいる。
日本信号は、既存の改札機を拡張する形で4種類の認証を可能にした「マルチ認証改札機」と、Bluetoothで乗客のスマートフォンを検知する「未来型改札機」を出展した(図1)。
マルチ認証改札機は交通系ICカード用の既存機を基に、手前側にQRコード・cEMV(contactless Europay, Master, Visa)クレジットカードの読み取り装置を取り付け、奥側に顔認証用のカメラを追加した。カメラは空中に突き出す形ではなく、改札機のフレームに沿わせるように装着したのが特徴。顔認証の処理には必ずしも最適な場所ではないが、乗客の邪魔にならないことを優先した。
未来型改札機は、乗客が持つスマートフォンからの信号を複数のアンテナで受ける無線機によって、乗客のいる方向を推定する技術を応用。同社が鉄道信号分野で培ったミリ波レーダーによる方向推定技術を利用した。改札機に装備した複数の無線機での方向推定を合わせて乗客の位置を特定し、スマートフォンとの間で決済処理を済ませるとともに、乗客の歩調とタイミングを合わせて通過の合図を出す。
通過の合図は扉の代わりに、空中表示技術を使う。乗客からは、改札機内の空間に矢印などの図形や文字が浮かび上がって見える。改札機の床下に光源を設け、ハーフミラー(ビームスプリッター)と再帰リフレクター(光を入射方向に反射して返す)を組み合わせた装置によって空中に像を見せる方式。扉をなくして改札機の中央部分を透明板とし、分割しやすい構造にして搬入や設置工事の負担を減らす。
大阪万博を機にOsaka Metro各駅へ設置
パナソニック コネクトは、高見沢サイバネティックスと共同で開発したウォークスルー型の顔認証改札機を出展した(図2)。Osaka Metro(大阪市高速電気軌道)が2019年から実証実験を開始し、2025年大阪・関西万博に向けて2024年度末までに各駅に導入する予定。利用者は事前にスマートフォンのアプリで顔写真を登録し、乗車券情報とひもづけておくことにより、歩くだけで改札を通過できる。会場では実際に顔写真の登録と通過を体験できるデモを実施した。
NECは、ラッシュ時などに対応して1分間に100人以上の同時顔認証を可能にする改札技術を出展。カメラに映る人物を検出して1人ずつ追跡し、少しでも顔が見えたときに顔認証を実行する。これによって漏れなく顔認証が可能になるという。NECは小規模駅や無人駅向けに、簡単に設置できる「ポール型顔認証改札」も出展。ICカードやQRコードで改札するマルチデバイス対応も検討している。
東京メトロは「タッチレス改札の研究開発」として、日立製作所と東芝インフラシステムズ(川崎市)の協力を得た装置を出展した(図3)。既存の改札機の上方に「BLE(Bluetooth LE)ロケーター」を設けて、乗客が持つBLEビーコン(スマートフォンなど)からの信号を受ける仕組み。BLEビーコンのからの情報を基に改札通過の認証処理を実行し、さらにBLEビーコンの位置を測位して乗客が通過するタイミングで改札機の扉を開ける。
現行の自動改札機をそのまま利用できるのが特徴で、すなわち既存のきっぷや交通系ICカードと併用できる。東京メトロの説明者は「現在の顔認証システムではラッシュ時の人の多さを(扉の開閉も含めて)さばききれない恐れがある。将来は顔認証での乗車が増えるとしても、当面はきっぷや交通系ICカードとの混在になるため、設備をいきなり全部切り替えるのも難しい」と開発の意図を説明した。
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