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ASIC開発の徹底支援でOAとFAの競争力強化へ - 日経BP

2020年に顕在化し、現在もまだ混乱の影響が残る半導体不足──。その影響は、半導体チップを活用して応用製品を開発・供給するあらゆる産業に波及している。日本では、自動車産業での工場停止などに巷の話題が集中したが、オフィスオートメーション(OA)やファクトリーオートメーション(FA)向けの機器など、日本企業の国際競争力が高い分野全般でも多くの企業に大きな影響が及んだ。

 半導体不足が最も深刻化した2020年から2021年、買い手がいくら大金をはたいてもチップの供給が困難な状況だった。「ところが、多くの半導体メーカーが顧客要求量の3~5割程度しか納品できない状況下でありながら、ファラデーでは平均85%以上、特定プロセスでは100%という充足率を達成できました」と語るのが、ファラデー日本法人の代表取締役社長である加藤祐一氏だ。

 同社は、1993年に半導体ファウンドリーである台湾UMCのIP(設計資産)設計部門から独立したメンバーで創立され、創立から30年の事業実績のあるASICベンダーである。2000年には日本法人としてファラデー・テクノロジー日本を設立。2010年以降は、複合機などOA向けASICの受注を強化したことで右肩上がりの成長をしてきた。「OA業界では、世界市場で高い競争力を持つ企業が日本に集中していますが、当社はその主要企業を顧客とし、カスタムチップを開発・供給しています」と加藤氏は話す。

設計から製造管理、納品まで
フルターンキーで責任受託

 ASIC開発において、もっぱら設計のみを請け負うデザインハウスの形態を採るASICベンダーは数多く存在する。こうした中、「ASICベンダーとしてのファラデーには大きく4つの特長があります」と加藤氏は言う。

 1つ目の特長は、カスタムチップの開発と供給をフルターンキーで受託するビジネスモデルを採用していることだ。チップ設計を請け負うだけではなく、マスク作成、チップ製造、組み立て、テストまでの工程を徹底管理する。

請け負ったASICのマスク作成、チップ製造、組み立て、テストを一貫管理

請け負ったASICのマスク作成、チップ製造、組み立て、テストを一貫管理

それぞれの工程の委託先には、世界をリードする技術を保有する企業を揃えている。ただし、得意技術などが異なる。ファラデーは、開発するASICに求められる要件を精査して、委託先の選択を支援。最も効果的で効率的なチップ製造ができる体制を整える。

 現在、ファウンドリーやOSAT(後工程受託製造)のほとんどが海外企業となった。ASICの開発・製造過程で何らかの問題が発生すれば、ASICユーザーによる距離と言葉の壁を越えた対応が必要になる。

 台湾企業であるファラデーに委託すれば、日本法人との対話だけで迅速かつ確実な対応が可能だ。同社が本社を置く台湾は、狭い地域内にASICのバリューチェーン上の企業が集積し、密な連携が可能な環境が整っているからだ。日本法人には25年以上ASIC開発に携わり、豊富な経験を持つスペシャリストがおり、さらにASIC開発の技術サポートが手厚い半導体商社と代理店契約を締結することで、高度な専門性に裏付けられた手厚い支援を、量産に至るまで得られる。

 2番目の特長は、UMCのグループ企業であるため、安定したチップ製造体制を提供できることである。UMCはファラデーの主要株主であり、UMCの会長はファラデーの会長を兼務している。また、シリコン検証済としてUMCがウェブに掲載しているIPの9割以上がファラデー製であり、さらにUMCの顧客トップ10にはファラデーが名を連ねている。こうした両社の深い関係性が、半導体不足のような局面では、製造優先権の取得しやすさ、ひいては安定供給に効いてくる。

 「ファラデーは、UMCから供給安定性と長期供給保証を取り付けています。近年、地政学上のリスクから台湾でのチップ製造への不安を語るASICユーザーもいますが、UMCはシンガポールの300mm工場を増強するなど、危機管理もぬかりなく進めています」(加藤氏)

 3番目の特長は、ファブレスのASICベンダーではありながら、自社開発IPを3000品種以上保有していることだ。保有しているIPは、UMCの製造技術でシリコン検証済であり、動作が保証されている。しかも、シリコン検証済IPを使えば、IP使用の費用は必要最低限に抑えられる。大規模なASICほど開発費の削減効果が大きくなる。

 しかも、要求に応じてIPの機能・性能の修正にも応じてくれる。例えば、ADコンバータの分解能や消費電力特性を向上させたいといった要望があれば、IP設計エンジニアが修正してくれる。また、CPUには英Arm製CPUコアの利用が可能であり、RISC-V IPベンダーとの協業も視野に入れている。

 4番目の特長は、現状、0.5μmから14nmまで、極めて幅広いプロセスノードでのチップの開発・供給を受託できること。レガシープロセスからSoC製造の主力である40nm、28nm、22nm、14nmまではUMCに、最先端チップを製造する場合は、韓国Samsung Electronicsに委託する。「現在日本企業が求めるチップの製造に適したプロセスのほとんどをカバーしていると言えるでしょう」と加藤氏は言う。

受託可能なプロセスノードと利用可能な製造技術

受託可能なプロセスノードと利用可能な製造技術

タフェースで受託できる。最も多いのがネットリスト、またはRTLで設計データを受け取り、3社ある代理店がネットリストへの変換作業を行い、ファラデーが受託するというもの。ASICの設計チームを持たない企業に向けて、仕様だけでの受託も受け付けている。

OAは実績豊富、FAは重点強化
日本の案件はほぼ100%量産化

 独自機能を搭載したASICを開発することで、応用機器の差異化を図る動きが活発化してきている。特に、日本のOA機器やFA機器の領域でその傾向が顕著である。

 日本市場において、ファラデーは、複合機などOA向けを中心に実績を積んできた。これからは、「コロナ禍を端緒として定着してきた在宅勤務向け需要の拡大によって、インクジェットプリンターでの開発競争が激化する可能性が出てきています。そこでは、独自設計したSoCによる製品の差異化が重要になってくることでしょう」と加藤氏は見る。

 また、FA機器の領域では、中国などでの人件費高騰に伴って工場スマート化の動きが活発化。エッジAIやIoTに対応したFA機器の提供が必須になってきている。そして、ロボットや自動化した各種生産設備を効果的かつ効率的に制御するためのコントローラーチップを独自開発する必要性が高まっているという。

 加藤氏は、「OA機器やFA機器でのASIC開発は、現状、プロセスノード22nm~110nmが中心になります。最先端ノードを使えば、より効果的なASICができると思いがちですが、コストが高くなるだけの例がほとんどです。特にFA機器などでは、最先端ノードを無闇に使うと、逆に信頼性を損ねる可能性さえあります。応用で求められる要件を合理的に見定めて選んだノードで、ASICを開発・製造できる体制を整えられるASICベンダーを選択することが大切ではないでしょうか」と言う。

 ファラデーは、OA向け画像処理SoCはもとより、AIoTの領域でも豊富な設計実績を持っている。創業以来30年間に、3000件以上のASICをテープアウトしており、そのうち全世界でこれまで85~90%、日本企業の案件ではほぼ100%が量産化に至っている。

 「ファラデーは、日本市場のお客様を極めて重要視しています。私たちだからこそお手伝いできるASIC設計のプロジェクトは、日本には多く存在すると考えています」(加藤氏)。自社製品の競争力を高めるためにASICを開発したい機器メーカーにとって、見逃せないパートナーとなりそうだ。

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