【激動の半導体業界、10年先の姿を探る】Grossberg 大山 聡氏
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1990年代はパソコンが、2010年代はスマートフォンが半導体の技術の進化を促し、市場規模を拡大させる役割を担った。これら2つの機器には共通点がある。いずれも、様々な道具や電子機器の機能を次々と取り込む方向へと進化していったことだ。
そして今、あらゆる道具や機器がネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングズ)の時代が到来しつつある。その時代に、パソコンやスマホのように、多様な道具や機器の機能を吸収して成長するような新デバイスは登場するのだろうか。
10年後を想定し、半導体ユーザーが明確な夢を描き、その実現に向けてまい進できる半導体業界のニューノーマル(新秩序)をテーマに議論しているテクノ大喜利。今回の回答者はGrossbergの大山 聡氏である。同氏は、IoT時代には、パソコンやスマホのようなあらゆる機能を吸収する新デバイスは登場しないとみている。そして、多様なデバイスの進化を支える半導体を、多くの半導体メーカーが開発・提供していくためには、様々な応用に横断的に利用できる標準化した技術が必要になるとしている。
(記事構成は伊藤 元昭=エンライト)
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
【質問1】半導体チップの継続的進化に向けて、今後重要性を増すと思われる注目の半導体技術の開発テーマとは?
【回答】半導体業界における分業制を前提とした技術の標準化や共有化
前回のテクノ大喜利で、チップレットの標準化に関するテーマが取り上げられ、筆者は「競合以上に協業の重要性が認識されるようになる」という主張をさせていただいた。半導体の設計や製造に関して技術の難易度が高くなればなるほど、半導体メーカーの数は限られ、ユーザーにとっての選択肢は減る傾向にある。ところが、ユーザーのニーズはむしろ多様化する。このため、限られたプレーヤーの選択肢の中から妥協点を探すくらいなら、独自チップを自力で開発しようか、という動きが半導体ユーザーの中に散見されるようになった。
確かにそうすれば、ユーザーにとっての選択肢は1つ増えることになるが、その開発リソースをどのようにそろえるのだろうか。そもそも、それだけのリソースをそろえられる企業は、限られることだろう。
重要な技術の提供元が特定の企業に集中するようになると、市場の健全性は担保できなくなる。そして、その特定企業の利害関係が業界全体を左右することになりかねない。パソコン市場における米Intel(インテル)の存在がこれに近い状態であり、同社の意向がパソコン業界に巨大な影響を与えていることを想像すれば、イメージしやすいだろう。
同社が描いたロードマップに沿って進化したパソコンは、技術の標準化や共有化が容易で成長が加速しやすかったと考える人は多い。そのおかげで普及が進んだことを、Intel独占のメリットとして挙げることもある。しかし、パソコンが今後何か新しいものに進化するとか、全く別の用途が生まれるなどは想像しにくい。パソコンはパソコンでしかなく、今後多様化する様々なニーズの一部だけに応える1つの製品分野にすぎないのである。
今後は、多様な機器がIoT端末としてネット接続される時代がやってくる。市場が大きな個別の機器の進化に合わせて技術を進化させるのではなく、ネット接続に必要な要素技術が並行して進化することが求められるだろう。パソコンに強いIntelや米Microsoft(マイクロソフト)、スマホに強い米Qualcomm(クアルコム)や米Google(グーグル)など、各社が保有する技術を効率よく融合させるためには、分業制を前提とした技術の標準化や共有化が重要と思われる。
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